東京高等裁判所 昭和26年(う)3468号 判決
〔抄 録〕
弁護人の控訴の趣旨第一点について。
原審が被告人の原判示第一の所為につき、食糧管理法(以下法と略称する)第三十一条、第九条、同法施行令(以下令と略称する)第六条を適用していることはまことに所論のとおりである。よつて、右擬律の当否について按ずるに法第九条はその第一項において、「政府ハ主要食糧ノ公正且適正ナル配給ヲ確保シ其ノ他本法ノ目的ヲ遂行スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ配給、加工、製造、譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費、保管及移動ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」と規定しており、令第六条は、その本文において「政府以外の者は米穀の生産者からその生産した米穀を買い受けてはならない」と規定しているが、右令第六条本文は、右第九条第一項の趣旨をうけてその所定の配給についての必要な命令を定めているものと解すべきである。けだし、令第六条本文が法第九条第一項の委任に基いて規定されたものであることは、法及び令が定めている各規定の体裁、内容等に徴し、容易にこれを推知しうるところであるからである。そして、所論被告人の各買受の行為は法第九条第一項所定の「配給」を乱す行為にほかならないから、該行為は令第六条本文及び法第九条第一項の各規定によつて禁止されているものと解すべく、あえてこれを犯す者は法第三十一条にいわゆる第九条の規定に依る命令に違反したものとしての制裁を免かれざることは、当然であろう。それ故、令第六条は法第九条第一項の委任の範囲を逸脱した事項を規定したものであることを前提として令第六条の効力を否定する所論は失当である。即ち、原判決には何等所論の違法はなく、論旨は理由なきものである。